いやなことば”水増し”
そして、今、起きていること。
「障害者雇用水増し3460人 国の機関の8割、雇用率半減」
という問題。
これがどうも分かりません。なぜこんなことするんだろう。国が決めたことを中央の省庁が40年以上にもわたって誤魔化してきていた。
なぜ?
ここ最近の役所のスキャンダルとしては、”公文書の書き換え”なんてのがありましたが、これは明らかに保身です。だから、やってはダメだけどやるんだろうなって理由は分かります。
文部科学省の汚職事件とかもそうです。”自分の子どもを裏口入学させちゃう”とか、とっても恥ずかしいことだけど、ま、やっちゃうんだろうなっていう理由は分かります。
ところが、今回の不祥事はどうもこういうのとは違う。言語道断だ!って障がい者の団体が怒るのはごもっとも。「障害者施策を推進する立場として深くおわびを申し上げる」と記者会見で頭を下げた加藤厚労相は当然。
みんなとんでもないことだって思っている。だったらそれは当の役所の人間だって同じはず。だけど、守らなかった、守れなかった。水増ししちゃったって。
なぜ?
民間企業の場合は国が定めた法定雇用率を下回ると、不足数1人当たり月額5万円の納付金を求められる。しかし、行政機関にはそもそもそういったペナルティーがない。だから、守らないのか?
そうじゃないだろう。
役所は税金で回ってるんだよね。決まった予算でやってるわけだからそれで組めば良いだけのはず。担当者が保身を図っているわけでも、不当な利益を得ようとしているのでもないはず。
恐らく、担当者以外の職員は達成していると思っていたのじゃないだろうか。そんなこと疑ってもいなかったんじゃないだろうか。
じゃー、担当者はなぜ?
もしかして、障がい者を雇用すると業務の効率が落ちて不都合が起きるとか組織全体を考えていたりするのだろうか、職場環境に何か影響がでるとかって思ってるんだろうか。民間なら、あってはいけないけどそう考えても仕方がないかもしれない。競争にさらされているのでね。
しかし、彼らに競争はないはず。それに、そもそもが、これは明らかな差別であり、憲法14条「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」をもっとも意識しているのが役人ではないのか。こんなことやっちゃう人たちだけど、妙に法の意識は高かったりする。そんな彼らがなぜ?
役所特有の横並び意識?
とも違うような気がする。
報道を見ていても、関係者が言い訳すらしていないのはなぜなんだろう。役所の不祥事ってのは、大抵が言い訳てんこ盛りで最初は始まります。それが報道と共に徐々に言い訳ができなくなって、最後に皆さんで、”誠に申し訳ございませんでした!”って頭を下げて終わり。
だけど、今回はその言い訳もない。
制度そのものの問題としては、この制度を所管する厚労省に監督権限がなく、各機関からの報告を受けることしかできないためだとも言われているけど、そもそもどうして監督しなければならないのだろう。
役所が民間を監督指導するのは分かる。だけど、彼らにしても自分たちを監督指導しなければならないなんて思わなかったのではないだろうか。
では、なぜ?
彼らは何のために?
この”水増し”ということばは、元々は日本酒を売っていた者がより利益を出すためにそれをアルコールで薄めて売っていたことが語源になっています。
「三増酒」といわれるものです。 戦争が終わって食べるものすらことかく時代。だけど、いつの時代でも酒飲みはいます。当時の国税庁に頭のいい者がいて、税金のたくさん取れる方法を考えました。日本酒1に対してアルコール2の割合で薄めて販売したから「三増酒」。当然美味しいはずがないんだけど、アルコールがほしいやつには売れた。でもって税収もその分伸びた。そう言えば、今回の水増し問題で最多の人数ごまかしを働いていたのは国税庁でしたね。元々水増しが得意なんだね。
しかし、今回の事件、事件なのか問題なのか、これはは水増しと言って良いのだろうか。
酒を水増しして売るとかってのは商道徳、商売倫理違反でしょう。しかし、今回の水増しは、人間性の根幹が揺らいでいる気がするのです。巨大な役所がみんな超鈍感な状態になってしまっているような。目の前のタスクに追われて足元を誰もが見失ったかのような感じです。
それともなにか、役所ならではのとんでもない制度が隠されているのだろうか。どうにも分からないのです。
そんな時、自らが障害を抱えながら会社を経営している佐藤仙務氏の発言がとてもまともに思えました。
Comment
コメント一覧 (3件)
障害者雇用を推進する立場にある行政機関が数を水増ししていた問題。40年という月日を考えると、行政機関自身に管理するシステムがなかった時代からチェックすることもなく今まで流れて来てしまったのではないかと推察します。
そもそも、企業に対して2.2%の障害者を雇用することを義務付ける制度自体に改善の余地があるというリンク記事の指摘が私も的を得ていると思います。
会社を運営する上で如何に会社の利益につながる人材を確保できるか、は会社として大きな課題ですし、だからと言って障害を持っている人の中にも熱意を持って仕事をこなせる人材はたくさんいると思います。
障害を持っている人がのびのびとお仕事をできる環境を整備すること、そして企業としても豊富な人材を確保できること、を目指した制度設計を行政機関には求めていきたいですね。
今回発覚した問題がまさに、行政機関自らが現制度の課題を浮き彫りにした形にしたと思いますので、罰則金を払う必要がない以上、できるだけ速やかな制度の改善を求めていきたいです。
特に担当の管理職に明確なジョブディスクリプションが存在していたか、その中に雇用者について書かれていたかが疑問です。推測ですが、雇用の数値を維持することも暗黙の達成基準になっていて、小さい規模での保身が働いているように感じます。
この記事の最後に”そんな時、自らが障害を抱えながら会社を経営している佐藤仙務氏の意見がとてもまともに思えました。”として、意見のリンク先を付けていたのだけどメンテしていたらリンク切れになっていました。そうなるともうどんな意見だったのかが分かりません。きっとその時にはとても感心したんだと思うのだけどもう分からない。こういったリンクの張り方はダメですね。