起業は善なの?

前回は、「独立」について述べましたが、今回は「」についてです。

8月12日付け日本経済紙上で、「ニッポンの起業力、これだけある米国との差」と題して伊藤穣一氏と夏野剛氏が議論を交わしていました。日本には米国と比べて注目に値するようなベンチャー経営者は出ていない、それはなぜかというものでした。
”米国では、最近はITの世界でGoogleやFACEBOOKなどベンチャー企業の象徴のような企業が誕生しているが、日本ではそういうった名前はとんと聞かれない。その理由として、日本では、そういった海のものとも山のものとも分からないベンチャー企業に出資するベンチャーキャピタルがいないから”とその理由をあげていました。

ま、これは昔から言われていたことですね。日本は銀行などの間接金融が中心ですから。これは根深いです。
もう一つの理由は、起業家に助言するヒトが不足しているのだという指摘でした。金だけ出して意見は言わないというのではなく、金も出すが口も出すからベンチャー企業が挫折しないのだという意見です。日本の銀行やベンチャーキャピタルには耳の痛い話でしょう。これは面白い指摘です。

ただ、この起業に対する日米の違いは、そのような一部の有名企業だけでなく、全体的な起業の件数が圧倒的に違っていることに現れているように思えます。日本にはとにかく独立志向の若者が少ないのです。
現実にも米国の学生は起業心が強く、それに対して日本の学生は未だに大企業への就職指向が強いと言われています。この不況期にはなおさらです。

それは、なぜか。

このアントレプレナー溢れる起業家を誕生させる上で、日米の文化には決定的な違いがあります。

ご存じのように、1620年、英国国教会からの分離独立、信教の自由を求めて、メイフラワー号で新大陸に渡ってきた彼らがアメリカ建国の祖になっています。
そして、彼らが分離しようとした英国国教会もまたヘンリー8世の頃に教会から、こちらは政治的問題から独立を果たしたキリスト教会であることは有名です。

おしなべて彼ら欧州においては征服と被征服、被独立と独立が繰り返された歴史があります。政治的にも宗教的(精神的)にも。

翻(ひるがえ)ってわが国には、幸いなことに他民族の支配を受けた歴史はありません(少しあります)。当然のことながら受けたことがないのでそこから独立した歴史もありません。
歴史的に日本がやばかったのは元寇、いわゆる蒙古襲来により、モンゴルの支配を受けることになっていたかも知れない一瞬でした。これが成功していたら、恐らくその統治は長く続き、日本の国柄も今とは随分と違ったものになっていたことでしょう。
あるいは先に述べた期にあれ以上混乱が続いていたら、欧米の植民地になっていた恐れもあります。西日本は英国、東日本はフランスと分割統治されていた可能性も可能性としてはあったでしょう。
もちろん、統治という意味では第二次世界大戦後、米国の占領を受けるわけですが、これはごく短期間であり、占領政策も先の第一次世界大戦後のドイツに対する占領政策がナショナリズムを誘発しヒトラーを生んだという反省から、日本の復興を念頭においた占領政策でした。その後日本の文化がアメリカナイズされ、文化的占領が続くことになっていったのは皆さんもご存じの通りです。
余談ですが、最近にわかに問題になっている韓国との領土問題。日本名は竹島だけど韓国名はその名もずばり独島です。韓国人も独立意識の強い国民ですが、日韓の歴史から現れたこの独島という名称にもそういった背景が感じられます。

さて、、結果としてわが国は他民族の支配を受けることはありませんでした。
この歴史が民族に与える精神的影響は大きいのではないでしょうか。

米国人などを見ていると、独立するというのは彼らが生まれながらに持っているバックボーンの一つのような気がします。見方を変えると時として一種のオブセッションのようにさえも見えます。人は独立しなければならない、それでこそ一人前の人間であるというオブセッションです。

片やわが国です。
聖徳太子の説く、”和を以て貴しとなす。”がまだまだわれわれの精神的基盤になっているようです。

アントレプレナー精神をもった若者が起業していくことは国全体の活力を生むことは多くの方が口にしますが、米国流のそのままでは日本の土壌には根付かないでしょう。


結果として産業が活性化し、雇用が生まれ、国が成長すれば良いわけです。西欧的起業の道ではなく、チーム力で力を発揮する日本の国柄に合った独立、起業の道を提示すべきなのではと思います。

■処暑、とタイトルが付けられていました。調べてみると暦の上では8月23日頃。暑さが峠を越えて後退し始めるころ、と出ていました。
良いですねー。
暑い、暑い、フー、ヒー、言いながら出社してくるとエントランスに美しい花が活けられ、そこに”処暑”と書かれているわけです。
都会ではあまり季節を感じることはありません。しかし、どんなオフィスにも季節は巡りやってきます。
花屋さん、いつもありがとうございます。
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