納豆が売り切れだ。近所のスーパーも2,3軒行ったがだめだった。ここなら常時あるだろうと訪ねたコンビニも全滅だった。
いったい何が起こったのだ?!
我が国は大豆は100%輸入だろう、であればアメリカや中国から急に大豆が入ってこなくなったのか。それともどこかしら商社の買い占めか。
それとも、それとも、ここのところの全地球的異常気象により納豆菌が全滅してしまったのか?
と訝しげに町を歩きながら、帰宅しテレビのスウィッチを捻ると途端ニュースが飛び込んできた。そのテレビで取り上げられた結果のことだったそうだ。
そうか、なるほど今回は納豆か。
納豆を食べると痩せる!
たったこれだけの情報で日本全国津々浦々の店先から納豆が忽然と姿を消してしまったのだ。
困った。
こんにゃくを食べると痩せるとなるとこんにゃくが犠牲に、牛を食べると痩せるとなると吉野家が繁盛し、鯨を食べると痩せるとなるとIWC(国際捕鯨団体)が逆上することになるのか。
もう痩せるという欲望の前には宗教も国家も環境問題も雲散霧消だ。
しかし、地味である。
いや納豆自身も食卓やスーパーの店頭においては決して派手ではあるまい、どちらかというと地味グループに属する。
だが、ここで言いたいのは、地味というのは商売の上でめっちゃ地味ということなのだ。
以前、健康食品を扱っているお付き合いのある問屋を訪ねたときのことだが、彼らは実に入念にこのTVのオンエア情報は掴んでいる。
当然と言えば当然だが、掴んでいて当たり前。最近は自らが仕掛け、ヤセアイテムを世に送り出している。
ちょっと前のチアシード然り、何とか茶しかりである。
わずか数ヶ月前のヒーロー達だが今では町ゆく人たちの口の端に乗ることは希だろう。
ただ、そのときは黄金色に輝くヒーロー達だったのだ。倉庫を潤す財宝だったのだ、人々が痩せると信じきっていた間は。
しかし、今度は納豆である。
気温20度の倉庫でも10日もすれば近寄りがたいほどの異臭を放つだろう。
地味だ、地味すぎる。