「戦場でワルツを」。映画「おくりびと」と外国語映画賞を争った作品を観た。
おくりびとは同じ葬式をテーマとした伊丹十三監督の「お葬式」を思い起こさせる。非日常だけど必ず人には訪れる儀式を、現場の専門家の視点から描いてる。そのことで人々は改めて自分たちの依ってたっている文化を見つめ直す。お葬式はそれをコミカルに、おくりびとはそれを様式美で伝えていた。外国語映画賞だから様式美が順当に価値を高めたのだろう。
この映画の原題は、”WALTZ WITH BASHIR” バシールと一緒にワルツをなんだね。映画を観ると分かるけど、こっちの方がすっきりくる。だけどそのためにはバシールが誰なのかを知ってなきゃだめだし、レバノンの政治情勢も知ってなきゃいけない。
僕は、そんなに詳しいわけではもちろんないが、彼が暗殺された時の様子は自分自身大学を出て、さてどうしようかと考えていた時期でよく憶えている。こういう不安定な時期というのは人は感受性は高くなっていたりするものだ。彼が暗殺され、一体これからレバノンって国はどうなるのよ、イスラエル問題なんて永久に解決しないんじゃないかって、そんな気分で新聞に目を落としていた。
アニメ映画だけど、映像はコマ送りのような感じで、動画っぽくないが、それが全体の色相などのトーンと共に妙に強烈な印象をもたらす。
僕は映画を観ながら、これはアニメだけど、きっとどこかで実写に変わるんじゃないだろうかと、そういう予感がしていた。それは当たった。この作品がアカデミー賞のアニメ部門でないのは当然か。
リアルな一瞬を見せたいために、延々と日常的戦争の非情さを描いてきたのだろうな。
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