江副浩正が亡くなった。
株式会社リクルートの創業者だ。
私が学生の頃から、その後、事業を始めた頃から、
彼が興したリクルートはやること為すこと何でもが注目を集めた。
インターネットがまだなかった頃、
彼は活字媒体で一種の情報革命をもたらしたのだと思う。
情報を販売することに対して、掲載側からお金をいただき、
販売はほぼ無料に近い形にした。
従来からもあるにはあった手法だが、彼は徹底していたし、
そのやり方は当時としてはとても洗練されたものだった。
情報を得る側ではなく、情報を発信する側に課金するそのやり方は、
今のネットでは当たり前の方向になっているが、
ネットのなかった頃、紙の媒体では極めて珍しい手法だった。
弊社のような情報を活字化して販売していた者にとって、その存在は大きかった。
破壊者に見えた。ヒンズー教における破壊の神シヴァ神にも見えた。
彼はリクルート事件後、表舞台に再び登場することはなかった。
享年76歳。
もし、リクルート事件がなく、
あるいはリクルート事件後もベンチャーの旗手として表舞台に彼が立ち続けていたら。
日本のインターネット業界は今とはまた違った姿になっていたのではないだろうか。
ヤフー、楽天とは違った形のネットの盟主がわが国に存在していたかもしれないなとさえ思う。
彼は、リクルート事件後は文化事業で余生を過ごした。
財団を設立し、オペラ音楽の世界にまさにのめり込んでいったように見える。
隠遁生活ではないだろうが、事業家としてのこの世は捨てた。
狂った歯車を戻すこともなかった。
残った人生を昇華させるにはオペラは最適すぎるけど、
オペラがあったから彼は実業の世界にはもう戻ってこなかったのかなとも想像したりする。
彼が愛したのはヴィンチェンツォ・ベッリーニのノルマだとか。
いいなー。決まりすぎだし。
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