身も心も凍り付いた、だけど凄く勉強になった。in N.Y.

ニューヨークシティーマラソンが行われた日、私はマンハッタンにある近代美術館にいました。この日は、ニューヨーク滞在の最終日。帰国便は午後発ということもあり、ホテルを出た私は、最後の半日だけは自由にと思い、マンハッタンの中心ペンステーションまで電車で行き、その近くの韓国料理店で朝ごはんにあつあつのズンドブを頂きました。駅を北へ少し行ったところ、ここは右を見ても左を見ても韓国料理店が並んでます。しかも24時間営業していて、冬が近づいてきたニューヨークで朝からズンドブが食べ胃袋を温めることができるのです。

ペンステーションから歩くこと40分程で美術館に到着。開館はまだなので下のスーベニアコーナーで洒落た雑貨や書籍に目を通していました。もうすぐかなと思いながら表を見るとどうも様子が変。周りの観光客も、タクシーがどうとか交通がどうとか、ポリスがどうとか言っている。尋ねてみると、今日はニューヨークシティーマラソンの日だから市内の各所が通行止めになり、交通はかなり混雑するらしい、空港行も当然やばいとのこと。

青ざめました。買い物の代金を支払い、慌てて外に飛び出したけれど、タクシーは来ない。地下鉄は人が溢れ、バスはどれに乗ったら良いのか分からないので、もと来た道を今度は走って戻りペンステーションにたどり着きましたが、券売機の前は地下一階から地上まで列ができていました。駅中を走り回って券売機や窓口を探したけれど、そこしかありません。駅員に聞いても、空港に行きたければ、あそこに並びなさいと冷たく列の最後尾を指さすだけ。いや、それじゃ飛行機に間に合わないんだよと恐らく必死の形相で話しかけましたが、駅員はただ列を指し示すだけです。しかし、その列に並んでもいったい何時間待たされるか想像もつきません。タクシーで空港に行けば渋滞は間違い無いのでこれも間に合う保障はありませんし、そもそもタクシーがつかまりそうにありません。運を天に任せて並ぶしかないのか…。

そこで、勇気を振り絞って、下手な英語で、券売機の最前列から航空券を上に掲げて、俺の飛行機があと少しで離陸してしまう。俺はこの電車に乗って空港に行かないと間に合わない。誰か俺に列を譲ってくれないかと叫びました。2度、3度。

前の方にいた可愛い北欧系のお姉さんたちは、お気の毒ねーと言いながら譲る気はない。真ん中あたりのいかしたイタリア系の男は、黙って最後尾を指さし、そこへ並べと促します。別の男も後ろを指さします。ほかの人は押しなべて困惑気味。結局誰も譲ってくれず。その間に時間はどんどん過ぎていき、列はどんどん長くなっていきました。

自分の英語が通じなかったことはないと思います。並んでいる人の目を見ると理解はしてくれたような気がします。しかし、その上でルールを守れと言っているようでした。
私は途方にくれながらも、これええなーと思っていました。これかー、これアメリカやん。甘えは許されへんのやなーと文化の違いを一方で楽しんでいました。これが日本なら誰か譲ってくれてると思います。そんな甘えが自分のどこかにはあったけれど、こっちでは通用しないというのを身をもって感じることができました。

もう列は諦めました。表に出て、とにかく空港に向かって歩こうと決めました。途中の駅では切符買えるかもしれないし、もしかしたらタクシーつかまるかもしれないと思って歩き始めました。

駅を出て5分ぐらい。50メートルほど前方でタクシーが止まり、客が降りようとするのが見えました。しかし、そこでは老夫婦が先に手を挙げており、客が降りるのを待って乗り込もうとしていました。意を決しました。駆け寄っていき事情を説明すると、にっこり笑顔で、本当ににっこり笑顔で車を譲ってくれて、私がお礼を言おうとすると、とにかく早くいけと私を車に押し込み、ドライバーに空港までの道順を指示してくれました。
車はマンハッタンを抜けるまでは大渋滞でしたが、抜けて高速に乗ると比較的順調で、まさにぎりぎりで搭乗には間に合い無事帰国することができました。

これもまたアメリカでした。
勉強というほどではないでしょうが、この恐怖に近い経験は自分でも深く体のどこかに入ったように思います。

 

 

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